優しく、儚く、美しい、人と妖の物語
「夏目友人帳」と聞いてピンと来ずとも「ニャンコ先生」と聞くと、あーあれか、となる人もいるかもしれない。ゲーセンによくいる、目つきの悪いオレンジと灰色と白の豚のような猫。画像検索をすれば見たことがある人も多いだろう。
夏目友人帳の主人公はそのニャンコ先生ではなく、ニャンコ先生が用心棒をする相手・夏目貴志である。
これは妖と、高校生の男の子「夏目貴志」の切なくも優しい話。主人公の夏目貴志が、祖母レイコの残した遺品「友人帳」に書かれた名を妖に返していく物語。名を返す瞬間、レイコにまつわるその妖の記憶が流れてくるが、そのエピソードがまたじんわりくることが少なくない。
1話完結である場合が多く、毎回のように心が温かくなる。
幼い頃にいじめを受けていたり周りから疎外感を感じたりした経験のある人は、特にこの作品に共感できると思う。主人公の夏目も妖が見えるという特殊な体質のせいで嘘つき呼ばわりされ、友達がいなかった。ようやく友達のようなものができそうになっても、妖に邪魔されたり友達だと思った相手が実は妖であったり。そのように人や妖のせいで寂しい思いをしてきたにも関わらず困っている妖に手を差し伸べ、自分の危険も顧みず友人を救おうとする優しい主人公・貴志に、ハマる女性が後を絶たないのかもしれない。