主人公 響の特殊性
この作品を見て私が一番はじめに感じたことは「主人公に共感できない」という事でした。
普通どの映画を見ても主人公にある程度は共感できる部分があるものなのですが、この作品の主人公「響」には全くと言って良いほど共感できませんでした。しかし、最後まで見ると、「この作品はそれでも良いのだ」と感じることができました。
響は誰もが認める天才ですが、おそらく誰もが認める変人です。その天才で変人の響に振り回されながらも、響の言葉に心を打たれ動かされる周囲の人たちこそ、私たち凡人に近く、そして周囲の人たちにこそ共感しやすい、そんな作品だと思います。特に、天才の隣で彼女と自分を比較して落ち込んでしまうリカの複雑な心境には、共感できる人は多いのではないでしょうか。
自分がどれだけ努力してもかなわないほどの天才に出会った時、自分の才能に自信がなくなり卑屈になってしまうリカの姿はとても人間らしく、共感できました。
また、この作品で初めて主演を務めた平手友梨奈さんの演技にも注目です。彼女の演技は初めての映画ということもあり、多少拙さは残るものの、おそらく多くの人がスクリーンの中にいるのが「平手友梨奈」であると意識しないはずです。そこにいるのは紛れもなく「響」であり、その役の入り込み方に彼女の将来性を感じました。
そんな将来性が期待できる女優を起用できたという点も、個人的にはこの作品を評価できると思います。
ただ、「響」という作品を2時間という時間にまとめるのは難しかったのか、響の才能と暴力性が際立ってしまい、彼女の信念や人柄について視聴者に伝わりづらかったのではないかと感じる点が少し残念ではあります。