キライなのは自分自身?ある成長物語
これはある二人の男女の出逢い〜終わり〜出発を描いている物語です。主人公のキャラクターとBGMのおかげで、物語全体に明るい雰囲気が流れていますが、テーマには「尊厳死」も含まれています。物語の展開は、よく漫画やラブコメでも見られるものです。最初は相性最悪の二人が徐々に心を開きだして、やがてお互いが大切な存在になる…というあの展開です。主人公は、イギリスのある田舎町に暮らす女の子ルー・クラーク。ファッションが大好きな彼女は、家族の為にカフェで働いていますが、その仕事を失ってしまいます。彼女が新しく就いた仕事は、車椅子生活をしているウィルの介護兼話し相手役。彼は、ある日交通事故により首から下の身体が動かなくなってしまいます。それ以降、車椅子生活になり、自分自身も誰も受け入れられない性格になってしまいました。おてんばで天真爛漫なルーは、クールで卑屈なウィルに中々厳しい扱いを受けます。しかし、裏表がなく明るい性格の彼女によって、凍っていた彼の心は段々と溶けていき、二人の距離は縮まっていくのでした。しかし、ある日ルーは衝撃の事実を知ります。ウィルは、尊厳死が認められているスイスにて、自らの人生を終わらせようとしていたのでした‥。
尊厳死については、様々な意見があります。しかし、ウィルにとって、自分の元彼女が親友と結婚することになったことや、周囲から哀れみの目を向けられる事故後の生活はどうしても受け入れられなかったのでしょう。事故前の自分は、キャリアもプライベートも全てを手に入れていたことを考えると、そのギャップは大きいものです。
最後まで自分の考えを変えなかったウィルは、ルーに自分の人生の残りを託したように見えました。彼女に、自分の可能性を信じて、つまらない人生を送るなと、伝えたかったのです。原題「Me before you(直訳で、あなたの前の私)」は「あなたに出逢う前の私」と捉えることも出来ます。ある一つの出逢いで、人生が変わった者と変えなかった者の物語でした。