「AKIRA」前夜に大友克洋が放った傑作漫画
日本のSF漫画&アニメの金字塔「AKIRA」を産んだ大友克洋が、その数年前にアクションデラックスなどに発表し、のちに大幅加筆され単行本化された漫画。緻密に描きこまれたリアリティのある団地(埼玉県川口市の芝園団地がモデル)を舞台に、そこに暮らすどこか鬱屈している住民たち、頻発する不可解な死亡事故、超常現象に翻弄される刑事…などの不穏な雰囲気を、当時20代後半で脂の乗りきっていた大友が、持ち前の渇いたペンタッチで巧みに表現。物語の冒頭はホラーっぽいですが、エっちゃんと呼ばれる少女が転居してくるあたりからアクション性が強くなり、真犯人との対決シーンでそれはピークに達します。特に屋上から始まる団地内を浮遊しながらのバトルシーンは、上下が逆さになったり横になったり、まるで3D映画を見ているようで、とても1980年代に発表された作品とは思えない迫力。のちに有名になる壁「ズン」もあります。後進に与えた影響(特に鳥山明)も感じさせる、中盤から終盤の破壊シーンはいつ読んでもトリハダを禁じえません。そして一貫して引きのカットをキープしていた展開からのラスト近くの2ページどアップ!ここまでされたらそりゃあ手塚治虫も嫉妬するわなと素直に思えるほど、漫画の表現を拡大させた革命的作品だと思います。ちょっとグロいシーンがあるのでそこだけ注意です。アクション、SFのみならず全漫画ファンに読んでほしい傑作です。