現実味のある異世界物語
他のいわゆる「異世界」ものと一線を画しているアニメが、この灰と幻想のグリムガルだと思います。
「なろう」でよく見る異世界英雄譚などは主人公が最強だとか、一つの能力がずば抜けているパターンが圧倒的に多いですが、灰と幻想のグリムガルの主人公やその仲間たちは例外であり、これでもかというほどとにかく弱いです。この点が灰と幻想のグリムガルというアニメの最大の長所でもあり、短所でもあります。
まず短所から述べると、なんといっても主人公たちが弱いので、どうしてもテンポが悪くなります。例えば異世界ものでよく登場する最弱モンスターのゴブリンでさえも、一匹しとめるのに最初は六人がかりでもやっとでした。このように他の作品ではポンポン進んでいくはずの場面でも、灰と幻想のグリムガルの主人公たちは時間がかかってしまいます。悪く言えばとろくさいです。ですのでアニメを見るときに、登場人物の心情の機微や現実味なんかよりもとにかく内容を早く知りたい!と考えてしまう方であればこのアニメは強くおすすめできません。
しかし、現実世界にいるあなたが仮に灰と幻想のグリムガルの世界に行ったところで、一撃でゴブリンを倒せるはずがありません。つまりこの作品はとても現実的に作られているのです。この点が最大の長所だと思います。異世界になんて行ったこともない私達でも、主人公たちに課せられたいくつもの過酷な試練がどれほど厳しいのかなんとなく分かってきますし、自分自身も主人公たちと一緒に旅をしている気分になれます。
さらにこのアニメの良い点を述べると、絵がものすごく綺麗です。あと挿入歌もいい。
もしこのレビューを読んで、面白そうだなと思ったのならまずはアニメを見て、その後、原作である小説も読んでみてはいかがでしょうか。