王になる男の最後の旅
この作品のメインキャラクターは、昨今のRPGでは珍しく女性がいない4人の男性です。
キャンプで料理を囲んだり、釣りを楽しんだり、チョコボに乗ってレースをしたり、車で世界を巡ったり、ゲームを楽しんだり、記念撮影をしたり…。男たちだけで気ままに旅を楽しむその姿は、まるで男子高校生の旅行のようです。
彼らの会話は気のおけない仲間同士のそれであり、時にふざけあい、時にぶつかり合い、すれ違い、和解します。そんなやり取りもまた、この作品の魅力です。
ワールドマップや戦闘開始はシームレスで長距離移動は車を使用するなど、世界を旅している感覚が味わえます。
この作品の大きな特徴に、バグの多さと悲惨なストーリーがあります。
戦闘は楽しくキャラクターの会話や魅力は十二分に楽しめるのですが、キャラクターが真顔で高速屈伸を始めたり、仲間の頭上で踊り始めるというシュールな光景が度々見られます。
幸いにもアップデートが重ねられ、進行に大きな問題のあるようなバグはありませんが、長時間プレイしてバグに遭遇しない事は困難だと思います。
ストーリーでは故郷は破壊、父は死に、婚約者は殺され、仲間は失明し、主人公ノクティスは自分の命と引き換えに世界を救うためラストバトルに挑むことになります。
ボスへ挑むまでの間に、人類の多くは死亡したと見られる状況、共に歩んできた仲間たちは命こそ落とさないもののたどり着いた途端ボスに一撃で倒され、ノクティスは一人戦闘の末に勝利し、命を犠牲に世界を救います。
ノクティスが最終決戦直前のキャンプで仲間に漏らした言葉は、自分が犠牲にならなければならないことに「覚悟はしていたつもりだけど、やっぱツレェわ」。
とても人間らしい台詞で、英雄も一人の人間なのだと考えさせられるものですが、そんな彼を救うことのできないストーリーは後味の悪さを残しました。
DLCとして、エピソード グラディオラス、エピソード プロンプト、エピソード イグニス、エピソード アーデン、戦友というエピソードが発売され、それぞれ本編で語られなかった空白時間を知ることできます。
これらはそれぞれ素晴らしいものですが、販売が中止されたものに「エピソード アラネア」「エピソード ルナフレーナ」「エピソード ノクティス」があります。
語られると期待されていた主人公であるノクティスと、その婚約者であるルナフレーナのエピソードが語られないというのはファンにとって残念としか言いようがなく、良作であるがゆえに大きな不満を残しました。
ストーリーが悲しいラストを飾るだけならば悲劇で終わりますが、語られていないエピソードでは違う未来があったのでは、という期待を持ち、それが打ち切られたというのはそれだけの衝撃です。
ゲームシステム、グラフィック、演出、キャラクターは一つ一つが魅力的ですし、不満点は多々ありますが、楽しめるゲームであることも事実です。