科学の力で人類200万年史を駆け抜けろ!
「その日、世界中の人間は全て、石になった」。
物語の冒頭は、いきなりそんなファンタジー全開の文言から始まる。
ある日全人類が謎の光によって石になってしまった。そんな中、石になりながらも好きな子を一途に思い続けて幾星霜。ついに石化が解けた青年大樹は、目覚めた世界で再会した親友の科学青年・千空とともに、石だらけの世界「ストーン・ワールド」を、科学の力で駆け抜ける…!
のだが、この冒頭に登場する大樹のおかげで、自分は最初の数話ほど、主人公が誰なのか完全にミスリードされてしまった。
その真の主人公、天才科学青年・千空が、文明の滅んだ世界で、たったひとりで復活するエピソードからが本格的な物語の始まりと言えるだろう。
後に千空は、この時代に生きる少女・コハクと遭遇し、原始の村を訪れる。村の「妖術使い」クロムを仲間にしたことを皮切りに、次々に仲間を増やしながら科学の発明品を作っていくさまは科学好きにはたまらない。
そして彼は大変悪い顔をする。もはや悪役である。閑話休題。
あらゆる科学の発明品で特筆すべきは、やはりエジソンの電球が出てくる話だろう。
夜、竹の繊維に初めて電気を流す直前に、千空がクロムに静かに語りかけるところからの一連の流れは、まさに感動に打ち震えるシーンだ。
この話が始まる直前から現代のことを知るメンタリスト・あさぎりげんが加わったことで、物語に心理学という新たな科学的側面が加わったことも大きい。
原始の時代で科学のあれこれがあり得ない速さで実現していく様は、本当に痛快そのものなので、是非読んで(あるいは見て)ほしい逸品だ。