南イタリアでのひとなつの思い出
どこの画を切り取っても美しい映画。
南イタリアのどこかの一人の青年がアメリカ人の男と出会い、恋するひと夏を描いた作品。同性愛といったらそれまでだが、この作品は同性愛をとても綺麗に描いていると感じた。
青年の日々の暮らしはスローライフのようで、インターネットから切り離された日本の忙しく流れの速い時間に急かされている我々にとって羨ましいものだった。ごはんは家の庭で家族全員で食卓を囲む。インターネットは一切出てこない。時間ができたら庭のプールで泳ぎ、読書をし音楽の好きな主人公エリオは楽譜を読む。ゆったりとした時間の流れを感じさせる。
想いが通じ合ったオリヴァーとの別れのあとのエリオの父からのエリオに対する言葉はとても重く、優しく、心打たれるものがあった。エリオの両親は同性愛を汚い、嫌悪感を抱くものだとは考えない。むしろ、父親はそれを素直な感情に従った素晴らしいものだとエリオに伝える。その話を聞くエリオのまなざしは強く、真摯に受け止めるものだった。
サウンドトラックも映画のテーマにあっている。坂本龍一のピアノの曲やステファン・スティーブンスのMystery of LoveやVisions of Gideonが特にお気に入りだった。
この作品は最後のエリオの父の言葉を除いて非言語的な場面に重要なメッセージが込められている。ストレートに何かを伝えるものではない。だからこそ、自分の胸に引っかかる「何か」もやもやするものがあり、それを考えるきっかけが作られると感じた。
夏にみたくなる、そんな作品である。