映画史上トップクラスの後味の悪さ
主人公はミュージカルの大好きな弱視のシングルマザーです。夢見がちということと、目が良く見えないということもあってか、工場で仕事中も頭の中で妄想を繰り広げて歌い、踊ります。その妄想シーンに合わせて場面はミュージカルに切り替わるのですが、その場面への入り方が絶妙です。
カメラワークといい、編集といい、演者といい、すべてが感動的といえるほどです。主人公であるビョークの歌唱力も素晴らしいです。
その妄想と現実の落差が映画をより奥行きのあるものにしています。奥行きがあるというかありすぎます。とても暗いストーリーです。救いがほとんどありません。
ビョークはハマり役でとても良い表情を見せます。共演しているカトリーヌ・ドヌーヴも優しく良い役柄です。しかしここまでするのかこの監督は、というくらい酷い話です。ラストを見たら落ち込むことは確実なので、心の準備をして鑑賞に臨むと良いです。悲しくはなりません。ただトラウマになります。メンタルの調子が万全ではない人は鑑賞を見送った方が良いかもしれません。ちなみに元々の台本では息子の目の手術は失敗でした。それをビョークがあんまりだと大反対して映画の結末になったそうです。
まるで悪口を述べているかのようですが、良い映画は見た人の心に何らかの爪痕を残すものです。そういった意味では、この映画は押しも押されもせぬ大傑作です。