十二人の怒れる男
低予算で、モノクロスタンダードの代表的な作品。
ほとんどが部屋の中でのやり取り。
一人の少年の親殺しの裁判をめぐる緊迫のドラマで、陪審制度の理想と現実を描いた歴史的な名作である。
12人の男たちは実に様々な人間性を備えた人たちであり、インテリもいればスラム街育ちもいるし、まじめな人もいればいい加減な奴もいる。親殺しと決めつけて、「とっとと片付けてしまえ」という意見に傾いたと思った時に、一人の男が立ち上がる。その男は「少年の命がかかっているから、いい加減な判断をやめて一から真剣に話し合おう」と言う。だらけた部屋に緊張が走り、否が応でも映画の世界に引きずり込まれていく。
日本の場合は多数決で決まるが、アメリカの陪審制度では12人全員が同意しなければやり直しをしなければならない。
一人の男、ヘンリー・フォンダが知的かつ冷静な男を演じている。12人の名優たちの気迫に満ちた演技を見るだけでも見ごたえのある映画だが、ストーリーも素晴らしい。物語は二転三転しながらクライマックスに向けて緊張が高まる。見ている私たちもあの部屋で一緒にいるような、疑似体験をしているような心理になる。
素晴らしいストーリーや監督の手腕、実力俳優たちの気迫のある演技。特に最後まで有罪を叫ぶ怒れる男を演じたリー・J・コッブの名演技がこの映画の一番の見せ場。
見るものを圧倒させる見事な存在感。映画史に残る名シーンである。