哲学的なアニメ
世にアニメは数あれど、採算度外視で原作を忠実に再現しているアニメでこれ以上のクオリティの作品はそうそう無いと考える。それはつまり、クリエイター達の本気を見られるということである。この作品の原作は漫画であるが、それに音と動きをつけることでこれだけリアルさを感じられるのかと初めて見た時は感嘆した。またほとんどが一話簡潔であるため、どの話数から見ても問題無くストーリーを理解できるのもオススメできる点である。見始めたら、まずは単純にその映像美を堪能して欲しい。背景の作り込み、見たことも無い蟲の確かな存在感にただただ脱帽する。また音響にもこだわっており、蟲の奏でる音色が美しい。肝心の物語は蟲という普通の人には見えない存在がいる世界での人と蟲、そして蟲師のギンコの体験したことを軸に進んでいく。文字にすると味気なく感じるが、どれも良く考えられていて、架空の物語と分かっていても自分の生活や人生と照らし合わせて深く考えずにはいられない。蟲という存在として描かれているが、むしろ蟲は私たち自身なのかもしれない。アニメを見ていくうちにどんどんそんな気がしてくる。とにかく不思議な気持ちや考えさせられるアニメであり、時間がある時にじっくりと見てほしい作品である。