SFホラーの金字塔とハリウッドホラーの原典
SF映画はB級作品である。そんな常識を覆したのは、『スターウォーズ』や『未知との遭遇』など数々の名作映画であった。そして、それら二つの作品と双璧を成したのは、リドリー・スコット監督作品の『エイリアン』であった。SF+ホラーというのは1970年代から1980年代にかけてのハリウッドにとって非常に画期的なアイデアであった。閉鎖的な宇宙船という空間の中で、謎のエイリアンによる襲撃を受け、次々と殺されていくクルーたち。クルーの中にも狂気に呑まれ、仲間に危害を加えようとする極限の緊張状態。人類の英知も、武器も、技術も通用しない外敵(エイリアン)とたった一人生き残った乗組員との絶望的な戦い。このような人間の得体の知れない存在への恐怖感、不安感を煽り立てた映画は今までになかったと言える。
そして、今作のエイリアンは、画家H・R・ギーガーが「ネクロノミコンⅣ」で描いた、黒と気色の悪いフォルムを持つ謎の異形存在がモデルになっている。この「ネクロノミコン」は、ハワード・フィリップ・ラブクラフトの「クトゥルフの呼び声」というシリーズに出てくる怪文書であるが、ハリウッドのホラー映画は『死霊のはらわた』や『遊星からの物体X』、そしてこの『エイリアン』と、多くのホラー作品がクトゥルフシリーズに由来しているため、他作品とのクロス要素も必見である。