きみはいい子

きみはいい子

『きみはいい子』とは、2012年に出版された中脇初枝による小説である。大阪の育児放棄事件をきっかけに執筆され、どこにでもある新興住宅地を舞台に、章ごとに異なる語り手の視点で描かれている。児童虐待を「される側」と「する側」の両方の心の問題を丁寧に描き出し、書店員からも高く評価され、2013年には本屋大賞4位ランクインや第28回坪田譲治文学賞を受賞した。2015年に呉美保監督により映画化。高良健吾が主演、尾野真千子がヒロイン役として出演した。

nakyのレビュー・評価・感想

きみはいい子
9

受け入れてもらうことの大切さ

この映画は、学級崩壊や児童虐待、高齢者の一人暮らしなど、現代の社会問題をテーマとして取り上げています。
学級崩壊のクラスを持つ小学校の担任、自分の子供を虐待してしまう自分も虐待を受けた経験のある母親、一人暮らしで少しボケはじめてしまっている高齢の女性、を主な登場人物とし、それぞれの抱える問題が入れ替わりで表現されていきます。
映画が始まり、児童虐待のシーンなどが出てきますが、そのシーンを見ているのは正直辛いです。近年、児童虐待の事件のニュースがよく流れますが、それを想起させます。
とても重い映画のように感じますが、最終的には方向性としてハッピーエンドで終わります。
それぞれの登場人物に共通し、映画全体で伝えたいことは、誰もが自分を受け入れてもらうことを必要としている、ということだと感じました。
自分の子供を虐待してしまう母親も、自分も虐待を受けた経験があり、子供を殴ってしまう自分を嫌い苦しんでいます。
もちろん、虐待する人を擁護するわけではありませんが、その人は、同様に虐待経験のあるママ友に抱きしめてもらい、自分を受け入れてもらいます。
それを見て感じるのは、虐待をはじめ社会的に悪いことをしている人でも、必ずしもその人が根幹から悪なのではなく、自分という存在を受け入れてもらえなかったという背景があるのではと感じました。
誰もが「あなたはいい子なんだよ、素晴らしい人なんだよ」と受け入れてもらいたいと思っていて、それによって世の中はもっと良くなるのでは、と感じました。