大切な人と世界最大のショーを見に行こう
19世紀に活躍した興行師P・T・バーナムの半生を描くミュージカル大作。
主演のバーナム役を油の乗り切ったベテラン俳優ヒュー・ジャックマン、ビジネスパートナーのフィリップ役を若々しい歌声が魅力のザック・エフロン、また一躍注目されたキアラ・セトルが圧巻の歌声で髭女役を演じている。製作はアカデミー賞で数々の賞にノミネートされた『ラ・ラ・ランド』のスタッフ。芸達者な役者達と有能な製作者が揃った本作。面白くないわけがない。
人間味あふれ魅力的なバーナムが、世界中の珍品を集めた博物館や、髭女や小人や巨人といった人々を集めたフリークショー(見世物小屋)など、興業の世界で失敗と成功を繰り返しながら、仲間や家族との絆を深めていく人生と、当時偏見にさらされていたマイノリティーの悲しさや辛さが美しい音楽とともに描かれていく。
特にキアラ・セトルが「This is me」を歌うシーンは息を呑む。白い目に晒され傷付きながら生きてきた者たちが自分の輝ける場所や生きる意味を知り、力強く「これが私よ!」と声高く叫ぶシーンは見る者の心に響き、先が見えない世の中へのエールとなる。彼女らが背負った辛苦や孤独といった深みがあるからこそ、ショーはより華々しく輝き、人々の心を捉えて魅了する。それをバーナム演じるヒュー・ジャックマンが厚みのある歌唱力と安定感のある演技力で「世界最大のショー」に仕上げた。
ある意味堅苦しいコンプライアンス的な現代では絶対にありえない展開に、見る者は一気にショーの世界に引き込まれ、まるで自分も見世物小屋の観客になったような錯覚に陥る。家族や友達と、出かけずして素晴らしいショーを味わえる逸品だ。