目立たない、だがそれがいい。クイーンのベーシスト、ジョン・ディーコン
イギリスが生んだ世界的ロックバンド、クイーンといえば、ボーカルのフレディ・マーキュリー、ギターのブライアン・メイ、ドラムのロジャー・テイラー、ここまで出てくる人は多いと思いますけど、もう1人、ベースのジョン・ディーコンの存在を忘れてしまう人もまた多いのかもしれません。
ジョン・ディーコンはクイーンの他の3人に比べて、それはそれは影が薄い、目立たない、おとなしい。ジョンはメンバーの中でも最年少で、クイーンにも一番最後にメンバー入りしました。オーディションで入ったんだそうです。
この時からジョンの控え目さは健在。フレディの圧巻のパフォーマンス、ブライアンの超絶ギターサウンド、ロジャーの迫力あるドラミングとは対照的に、ジョンは地に足ついた着実なベースプレイを心掛け、派手なパフォーマンスはほとんどやらない。そしてクイーンの真骨頂ともいえるコーラスワーク、あのコーラスにジョンは参加していないのです。自称、音痴だからということで参加していなかったみたいですが、本当に自己主張の少ない、それでもミュージシャンなの?と首がひとりでに傾いてしまいます。
でもこんな控え目なジョンの存在は、クイーンというバンドの存続を可能にしました。ただでさえ自己主張の激しいフレディ、ブライアン、ロジャーの3人に対して、おとなしくて温厚なジョンがいることでバンドとしてのバランスが保たれていたのでした。ジョンが書いてくる曲はポップセンスが光り、クイーンの楽曲の幅を広げます。そしてクイーンの代表曲の一つ、初の全米No.1ヒットとなった『地獄へ道づれ』は、意外や意外、ジョンの作品なのです。作ったのは曲だけではありません。ブライアンが使うギターアンプは、実はジョンが作製したもの。ジョンは電子工学の博士号を持っていて、アンプやエフェクターを自分で作ることができたのです。ブライアンが繰り出すあのギターサウンドは、ブライアンお手製のギターもさることながら、ジョンの作製アンプがあったからこそのサウンドだったのです。
目立たない、控え目、地味、そんなジョン・ディーコンですが、ジョンがいなければクイーンのバンドは成り立ちませんでした。目立たないけどなくてはならない存在、まさに存在がベーシストということなんです、ジョン・ディーコンは。クイーンを聴くときに、どうかジョンのベースに耳を傾けてください。華やかなサウンドに影に隠れて気づかれにくいけど、バンドのかけがえのない存在をジョン・ディーコンのことを忘れないでください。