色あせない大人への反抗「尾崎豊」
大人とはなにか、愛とは何か。生涯問い続け、歌い続けた歌手がいます。彼の名前は尾崎豊。
代表曲と言えば、「盗んだバイクで走り出す」で有名な「十五の夜」やカラオケで上位にランクインし続ける「I LOVE YOU」など。
しっかり聞いたことはないけど、どこか聞き覚えがある曲としていつの時代も若者の耳に入ってくるのではないでしょうか。
彼は1992年、26歳という若さでこの世を去りました。彼が残した多くの曲は今でも「大人とはなにか」を問い続けています。
デビュー曲は先にも上げた「15の夜」です。
「誰にも縛られたくないと逃げ込んだこの夜に、自由になれた気がした15の夜」。サビのフレーズです。逃げ出した先で自由になったのではなく、結局は自由になれた気がした。諦めでもなく妥協でもない、ただ受け入れなくてはいけない支配への微かな抵抗を若干16歳で歌い上げる尾崎豊の才能には脱帽せざるを得ません。
セカンドアルバム「回帰線」には代表曲の一つ「卒業」が収録されています。「卒業して一体なにが分かるというのか。思い出の他になにが残るというのか」力強く叫ばれるこの歌詞は指導というベールを被りながら支配空間として鎮座する学校への欺瞞と不満を吐き出す尾崎の気持ちが綴られています。
10代という若さで少年や少女の言葉にできない気持ちの代弁者となった尾崎。彼の歌う曲は愛と大人への抵抗に満ちていました。
しかし、20代を迎えた尾崎は転機を迎えます。子供が生まれ、10代の代弁者であった自分が確実に歳を取っていく中で生まれた葛藤。その集大成が5thアルバム「誕生」です。
晩年の作品に入る「誕生」は今までのレジスタンス的な歌詞は一切なく、孤独と寂しさと愛に満ちています。「誕生」という曲の最後に尾崎はこう語り掛けます。
「新しく生まれてくる者よ。お前は間違っていない。誰も一人にはなりたくないんだ。それが人生だ、分かるか」
仲間、家出、反抗、不満、魂のまま叫び続けた尾崎は最後、呟くように新しい生命に語り掛ける。
これは大人になることの諦めのため息なのか。人生を悟った最後の遺言だったのか。果たしてそれは定かではない。
26歳で急死した尾崎は大人だったのか。きっと彼も分かっていない。そもそも大人とは何か。普遍的な答えは見つからないが、尾崎豊は自分の中でその答えを見つけるヒントになると思います。