ボウイはその存在こそが1つのジャンルなのだ
1947年生まれ、2016年没。イギリス出身のロック歌手、という紹介だけでは語ることができないくらいに様々なことをやってきて、亡くなってからも多くのミュージシャンに影響を与え続けている。音楽的な活動は、フォークロックから始まり、ニルヴァーナのカート・コバーンがカバーしたことで有名になった「世界を売った男」を含むサイケデリックロック。そして山本寛斎とのコラボレーションから生まれたグラムロック。その後、ソウル、ファンク、ニューウェイブ、ポップス、ジャズ、ドラムンベース、そして最終的にロックへと回帰する。その音楽的な遍歴をたどるだけでも相当の時間を要する。
また、プロモーションビデオというものにもいち早く取り組み、1972年の時点で先鞭をつけている。だが、ボウイのプロモーションビデオが本格的になったのはニューウェイブの時代、いわゆる「ベルリン三部作」の時代からである。その頃から独創的なビデオを撮り始め、1980年の「Ashes to Ashes」は当時としては破格の金額をかけ、その後のMTV時代へと突入していくためのきっかけとなった。
また、ボウイには映画俳優としての顔もあり、「地球に落ちて来た男」「戦場のメリークリスマス」「ラビリンス」など、その存在感を十二分に発揮している。とにかく、ボウイを語るには一つのジャンルだけで語ることは難しい。あまりにも彼の仕事が広大すぎるからだ。だからといって、全部を知る必要はない。気になるものから触れていけばいいのだ。ボウイは彼自身が一つのジャンルであるのだから。ただし、一旦触れればそこには広大な世界が広がっている。それだけは覚悟して欲しい。