儚くも美しい、孤独な物語
とあるアパートで起こった事件をきっかけに奇妙な共同生活を送ることになった殺し屋レオンと少女マチルダ。家族、とりわけ弟を殺されたことに復讐心を燃やすマチルダは、自身も殺し屋になろうとレオンに教えを乞う。当初は拒否していた彼であったが、彼女の頑なな意志を前に渋々心を開き、二人は徐々に信頼や愛情といった関係を育んでいった。
父と娘ではなく、恋人でもない。一人の殺し屋と復讐を誓う少女の物語。そんな二人の行く末は儚く悲しいものである。従って、この物語はグッドエンドとは言えない。しかしその事実が、この物語に美しさを与えている。
物語はいたってシンプルで、はっきりとした起承転結がある。
しかし決して単調なわけではなく、鮮やかな起承転結の中に様々な感情が詰まった見ごたえのある作品で、没頭しているとあっという間に終わってしまい、短いと感じてしまうほどだ。
冷酷でありながらもどこか冷酷になりきれない、そんな男を見事に演じたジャンレノ。幼いながらも怪物級の演技を見せる少女時代のナタリーポートマン。決して登場人物は多いとは言えないものの、そんな中で役に徹した素晴らしい脇役たちの存在。束の間の休息を破るような激しいアクションシーン。あっという間の時間の中で交差する複雑な感情……。
最後に訪れるのは静寂と、そしてスッと引いていくような侘しさや儚さ。そんな郷愁にも似たもの悲しさは、見る者に美しいとさえ感じさせてしまう。
家族でも恋人でも友人でもない、そんな二人の関係性の行く末と、決してグッドエンドとは言えない結末がもたらす「儚さの中にある美しさ」。そんな芸術性がこの映画にはある。