ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

『ボクたちはみんな大人になれなかった』とは、燃え殻による恋愛小説、およびそれを原作とした映画作品。note運営のコンテンツ配信サイト・cakesで連載され、2017年6月30日に新潮社から刊行。2018年12月1日に文庫化された。映画は2021年11月5日に国内の劇場で公開され、Netflixにて全世界同時配信が行われた。監督は森義仁、主演は森山未來。
過去に失恋した彼女のFacebookに誤って「友達申請」をしてしまった「ボク」の一日を描いた作品である。

anna_dollのレビュー・評価・感想

ボクたちはみんな大人になれなかった
9

どうしてこんなに懐かしい気持ちになるのだろう

結論から言うとすごくよかったです。
恐ろしいほどリアルで、もどかしいほど心を揺さぶられる。自分とは1ミリも重なっていないのに、不思議なほど懐かしい気持ちになる。まるで自分も同じ過去をたどったみたいに、ボクの気持ちが痛いほどわかり、思い出すのがひどくつらい。この作品の中の景色を頭に浮かべようとすると、すべてがセピア色に映し出されていく。私以外にもいるはずだ、自分の過去を思う時、その思い出がつらいものであろうとなかろうと、もうその時の自分にはどう頑張っても戻れない、そのこと自体がどうしようもなく悲しくて仕方がないという経験をした人が。
この作品を読んだ時の気持ちは、その時の気持ちととても良く似ていると思う。繰り広げられているのはなんてことないボクの人生。最愛の人、下積み時代、出会った人々、成功、変化、むなしさ、得たもの、失ったもの…そのすべてはもう過去であり、記憶である。それほど戻りたいわけではないのに、戻れないことを改めて突き付けられるとどうしようもなく苦しい。どうしようもないそんな感情にどっぷりと浸れる作品。
読めば私の言いたいことがわかる人がきっといるだろう。そしてもう1つ、私が思ったことは、この作品を読んで思い出すような恋がしたい。ふと思い出したときに、ひどく心をえぐる、最悪の恋だ。