ジョーカー・ゲーム / ジョカゲ / Joker Game

ジョーカー・ゲーム / ジョカゲ / Joker Game

『ジョーカー・ゲーム』とは、柳広司による日本の短編ミステリー・スパイ小説および、それを原作とした漫画、アニメ作品である。「D機関シリーズ」と呼ばれている。2016年4月から6月までAT-X、TOKYO MX他にて放送された。第二次世界大戦前の帝国陸軍内に結城中佐によって、秘密裏に設立されたスパイ養成部門「D機関」。アニメでは、そのD機関員たちが世界で暗躍する全12話のストーリーが描かれている。

kiriyamamiuのレビュー・評価・感想

ジョーカー・ゲーム / ジョカゲ / Joker Game
8

原作の短編小説を構成で昇華した名作

原作の小説は一人一人主人公が異なる(厳密には偽名で登場し正確な名前が明かされないので同一人物がいるかわからない)短編小説で、戦前を生きたスパイの一つの仕事ぶりが描かれているだけで、1話1話の時間軸もバラバラである。
しかしアニメの方は1、2話しかけてその一人の登場人物の目線でスパイの仕事っぷりが描かれた短編を描いて行くのだが、全12話を1話から順に観て行くと『スパイとしての生と死』をテーマに掲げていたとわかるようになっている。
1、2話でD機関が掲げるスパイの定義、3話でスパイとなった人間の化け物と言われるほどの能力と化け物の信念、4、5話でそのプロフェッショナルな技術力、6話でこれまでに少しずつ見えてきた、彼らがD機関でスパイであり続けられる信念と理由が明らかになる。6話まででスパイとは何か、スパイとしての生が見えてくる。
しかし7話で初めてスパイの人生からの離脱者が描かれる。命令を機械のようにこなしている彼らが一人の人生のある人間であると実感することになる。8、9話ではまた揺らがない強固な信念が敵対する組織と対比されて改めて描かれる。10話でその集大成が。そして初めて11話でスパイとしての人生の死が描かれる。ここまで化け物たちを描いてきたが最終話は化け物になりきれなかった人間の話で幕を閉じる。
一つ一つ単独で楽しむ作品を、生と死に焦点を当て、スパイの人生を複数の主人公目線で描き切った改作であり快作だ。