穏やかな気分になる映画
空腹時に観るのは危険、終わったら和菓子が何故かむしょうに食べたくなるかもしれないからです。
この映画にはワクワクするような衝撃、ストーリーはあまり期待しない方がいいかと思います。そういう意味では人を選ぶ作品かなあと思います。
一人の女性が青春から人生の中堅に差し掛かるまでの二十年の時間を切り取って丁寧に丁寧に描写しています。そしてそんな主人公のそばにはお茶、茶道の存在がそっと寄り添っています。
黒木華演じる主人公の女性はあまり個性があると言えず、どこか周りに埋没してしまうような地味な女の子。お茶だって、両親のすすめと、多部未華子演じる従姉妹の勢いに押されるようにして何となく始めてしまった感じ。スタートがそんな感じ故に主人公がお茶に知らずしらずのうちに惹かれていき、生活の一部となり、なくてはならない存在になっていくのがゆっくりと伝わってきました。
特筆すべきは、公開時期に亡くなった故に一層意味深いものとなった、お茶の先生役である樹木希林の存在!茶道を少しでも習った人間なら誰でも居る居るこんな先生!と言ってしまうくらいそのものでした。この女優さんは本当に素晴らしい。悩める主人公を時に導き、寄り添い、後押しするお茶という存在、お茶を習う人が増えたなんて話を聞くと、この映画の存在を思い出してしまいました。