月に吠えらんねえ

月に吠えらんねえ

『月に吠えらんねえ』は2013年から2019年にかけて『月刊アフタヌーン』にて連載された、清家雪子によるファンタジー漫画。略称は『月吠』。
舞台となるのは近代日本のような幻想の街「詩歌句街」。街では近代の詩人・歌人・俳人たちの作品からイメージされたキャラクターが創作活動を行っている。自意識の目覚めに苦しむ近代の女性像や文学者の戦争責任といったテーマを扱っており、文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞、第19回センス・オブ・ジェンダー賞を受賞するなど高い評価を得ている。
またリブート作品として『月に吠えたンねえ』がある。

elのレビュー・評価・感想

月に吠えらんねえ
9

これほどまでに参考資料の多い擬人化がかつてあっただろうか

月に吠えらんねえは、近代詩歌俳句の作品のイメージの擬人化作品です。
擬人化や美化はもはや珍しいものではなく、武器や食品、過去の偉人等がイケメンになったり美少女になったりするのは日本ではもう日常茶飯事です。
まず本を手に取って最期のページから1ページだけ捲って見て下さい。参考文献リストがあります。もう一ページ捲って見て下さい。参考文献リストがあります。数えてみると、200冊以上の文献を資料にして書かれた作品だということがわかります。
1巻を読んで「なんでこんなに必要だったの?」と思われる方も、巻を重ねるごとに理解していけるかと思います。
擬人化・美化作品の魅力は、キャッチーですぐにキャラクターの素敵なところがわかるよう、物語の中ですべての情報がキャラクターが出てきた話で大体わかるところです。
ソーシャルゲームでも、キャラクターが手に入ると自己紹介が読めますし、それでそのキャラクターがどんな奴かすぐにわかります。
しかし、「月に吠えらんねえ」ときたら、その擬人化・美化の利点を全力で無視して、キャラクターの行動も、心理も驚く程読み取れません。そういう点では、普通の漫画に非常に近いので、擬人化に安っぽいイメージをお持ちの方はまず、読んでみて頂きたいです。
ストーリーを追う楽しさがきちんとある物語です。そして、あの意味不明な量の参考文献の理由も、巻を重ねるごとに明らかになっていきます。出来ればネタバレしないで、読んでみて欲しい。読んでみて、こんなこと書いていいのか!?と驚いてページを捲ってみて欲しい。
色んな意味で型破りな漫画、突き抜けたものが読みたい、そんな方に是非オススメの作品です。