オールド「ロッキー」ファンはもちろん、「ロッキー」を知らない世代でも楽しめるボクシング映画
ロッキーのライバルだったアポロ・クリードの息子アドニス・クリードが、ロッキーの宿敵だった旧ソ連のイワン・ドラゴの息子と対決するといういかにもB級映画っぽい設定。
オールド「ロッキー」ファンとしてはそれほど大きな期待はしていなかったのだが、いい意味で裏切られた。ボクシングが題材ではあるものの、アドニスとその妻(および母)、ロッキー、ドラゴ親子がそれぞれ抱える寂しさや親になるプレッシャー、自分たちを捨てた妻(母)へのやるせない思いといった屈折した感情が良く描かれており、年配の人であればロッキーに、若者であればアドニスに、そして妻や上司に鬱屈した感情を持ちつつも毎日頑張っている中年男性はきっとドラゴ親子に、それぞれ感情移入できるようなヒューマンドラマになっている。もちろん厳しい特訓に耐えてついには宿敵を打ち負かすといったロッキーのお決まりのパターンは踏襲しているものの、それがすべての映画ではない。セコンドであるロッキーはもはや妻を失った孤独な老人で、最後宿敵を打ち負かしたアドニスに「お前の時代だ」とエールを送る脇役でしかないが、最後には息子と孫の家を訪ねてよりを戻し、老後の幸せが暗示されているのはオールドファンとしてはほっとする。