魂を削って
以前、この漫画の作者さんが「自分は魂を削って作品を描いている」とおっしゃっているのを読みました(うろ覚えですが、ニュアンスは間違っていないかと。ツイッターだったと思います)。
その時には、「ハチミツとクローバー」の作者様、という認識しかありませんでした。恋愛メインのお話にあまり興味のない自分には、「ふうん、そうなんだ」くらいにしか思わなかったのですが、この作品を読んで心底納得しました。
生きていく上で、誰もがままならない思いを抱えているものだと思います。大事にしたいひと、貫きたい信念、不器用なパーソナリティを抱えていればいるほどに。
でもそれでもと、全部抱えて歯をくいしばって前に進もうともがく主人公や、その周辺の人々の、丁寧かつ熱のある表現に圧倒されました。きっと、作者ご本人様の生き様そのものなのでしょう。
日々、思い通りにならない事が多すぎて、それに慣れすぎて、自分は自身も含め、大事なものをないがしろにしながら生きているのではないだろうか。棋士とは無縁な場所にいる私ですが、なんだか戦う意欲が湧いてくるような作品です。大切なものを守るために。
ストーリーは、将棋を知らなくても楽しめます。というか、自分でもやってみたくなってしまうかも。
くすっと笑ってしまうようなエピソードや恋愛要素もあり、エンターテイメントとしても立派に成立している良い作品です。