浅野井いにおワールド炸裂
「プンプン」という名前の、決まった顔のない主人公(作中では基本落書きのように描かれていますが、ぷんぷんの感情で表現が変わります)が小学生から大人になるまでのお話です。
プンプンは小学生の時に愛子ちゃんという女の子に出会い、好きになります。でも愛子ちゃんの衝撃的な存在に、プンプンは大人になるまでずっと愛子ちゃんの影をひきずりながら大人になって行くのです。
この主人公は本当はキチンとした名前を持つ人間なのでしょうが、読者が感情移入しやすくするためか、プンプンの本当の名前も顔も作中では登場しません。
気のぬけたプンプンの絵で、お笑い漫画か癒し系漫画だと思って読み進めるとえらい目にあってしまう漫画です。この漫画は作者浅野いにおさんの世界が爆発していて、残酷な世の中や、誰もが感じた事のある不安感や孤独を、その時その時で形の変わるプンプンを使って絵として描写されています。
なので、読んでいるとプンプンと同じ経験をした事のない人でも、自分も感じた事のある感情を思い出す作品となっていて、ただストーリーを楽しむだけの漫画の一線を越えている気がします。怖い。怖いけれど、こういった感覚を味わえる漫画は少ないのと思います。はまってしまうと抜け出せず、ずっと心に残る素晴らしい漫画です。