「逃げる」ことから始まる英雄譚
皆さんは歴史の史実に基づいた作品を見たことはありますか?また、皆さんはどの時代を描いた作品が好みでしょうか?
どの時代の作品でもよい作品はあると思いますが、特に、武士が活躍する時代を描いた作品は面白いものが多いですよね。
そこで今回紹介するのは「逃げ上手の若君」という作品です。
この物語は、武家社会の基礎的な仕組みを築いた鎌倉幕府が1333年に、幕臣である足利高氏の謀反により滅亡し、すべてを失った鎌倉幕府の正統後継者の北条時行が、神を名乗る神官の諏訪頼重の助けを借りて鎌倉の地から逃げることをきっかけとして、鎌倉奪還を目指す英雄となる準備を整えていくというあらすじです。
この作品の面白いポイントは「逃げる」ことによって英雄になるという点です。この時代の一般的な物語では、武士としていかに武功を挙げて死ぬかが重要視されたものが多いですが、この作品では逃げて生きることで名を残すことを軸としています。この点が他の時代劇作品と違う部分であり一番面白い点です。
主人公である北条時行は武術の稽古からのらりくらりと逃げ続けていた結果、武術の心得はほとんどなかったものの、何かから「逃げる」ことに関しては誰よりも長けていました。時行はこの特技を生かして、逃げながら生き続けて英雄を目指します。一方、鎌倉幕府を滅ぼした高氏は、圧倒的な強さとカリスマ性で人々の英雄となります。この二人の英雄が正反対であるという点がとても面白いと思いました。
また、この作品は所々に挟まれるギャグも一つの魅力です。武士の時代の物語であるという性質上、残酷でシリアスな場面も含まれるのですが、所々でギャグが挟まれることによって、シリアスな雰囲気が緩和され、全体的に楽し気な雰囲気を醸し出しています。
今回は「逃げ上手の若君」という作品の魅力について紹介しました。史実に基づいた作品が好きな人はもちろん、あまり歴史に興味がない人でも楽しく見れる作品となっています。「逃げる」ことを主軸とした英雄譚をぜひご覧ください。