クジラのような雄大なミュージシャン
とにかくヒットとタイアップばかり。「聞いたことない」と言ってもCMの曲を聞かせれば「知ってたわ…」になります。
テレビで初登場した紅白の「Lemon」は『アンナチュラル』というドラマと共にこの世に放たれましたが、どの年代の人でも音楽は聞かない人でもどこかに刺さった曲です。
この人の音楽ジャンルを1つに決めるのはとても難しい。アルバムはおもちゃ箱を逆さにしたようなあらゆるジャンルが聞けるけれど、ビクビクしなくても好きな曲から選んでいい。でもきっと次が欲しくなるので、また次を選べはいいと思います。
「タイアップの曲ばかりになるのは悔しいから、意地でも新曲をあと10曲作った」という意地もバラエティに富み、ずーっと飽きない。どのアルバムもサブスクではなくCDで曲順も聞いて欲しいです。
曲だけでなく、詞について知ってほしい。
ここのところ立て続けに長いインタビューを受けてくれていたので、あの低くて穏やかな声でゆったり時間が流れるような、無言の時間を恐れない空気感と、スルスルと出てくるクレバーな美しい日本語にうっとりしたので、わざわざ隣国や世界を目指そうという気もなく、本人も言ってたように「自分は自分で日本語が好きだから、海外で“しぐるるやしぐる”が通じるとは思えないし」と静かな空間で笑い、歌詞にたまに入る「しらねーけど」「ちゃんと話そうぜ畜生め」などの口の悪さ加減のバランスが最高です。
とても大きな俯瞰カメラがあって、見てる世界がとてつもなく大きい。「なるようにしかならない」という考え方は共感者も多いでしょう。決してそれは投げやりな訳ではなく「言っていいのか…正直夢は叶わない訳ですよ」の一言で、信用出来ると思いました。
だからこそ、彼の曲を楽しんだら歌詞も楽しめるはず。たっぷり遊んで欲しいんですよ。