ヒーローだけでなく悪役を深掘りしたジャンプ作品では異例の傑作
誰もが特殊能力「個性」を持った超常社会。なんの個性も持たない「無個性」である緑谷出久(みどりやいずく)が、皆の憧れの職業である「ヒーロー」を目指す物語。
『週刊少年ジャンプ』で連載されていた、主人公の成長とともに描かれる王道ストーリーですが、漫画だけにとどまらずアニメや舞台、そして映画などの多方面で大きくヒットしています。話の中では、主に平和の象徴である人気ナンバーワンのヒーロー「オールマイト」をはじめ、個性的なヒーローや特徴的な個性を持った仲間たちが登場します。しかし、物語を追っていく中でも特に印象に残るのが、ヒーローの敵「ヴィラン」。触ったものを粉々にする個性をもつ死柄木弔(しがらきとむら)と、その仲間である「ヴィラン連合」がヒーローたちの前に立ちはだかります。ここで他の作品と異なるところは、ヴィラン達の背景が深く描かれている点。ヴィラン達の過去にどんな辛い事があって、どんな逆境を乗り越えて悪事の限りを尽くしているのか。ヴィランの過去が鮮明に描かれることで「ヒーローがヴィランを倒して一件落着」という単純な話に収まらないような、深く考えさせられる濃いストーリーとなっています。そんな中、常にピンチに立たされる出久を追いかけて読み進めている内に、気づけばあっという間に時間が過ぎていくような、日本が誇る最高の漫画です。