アレックス(映画) / Irréversible

アレックス(映画) / Irréversible

『アレックス』(原題:Irréversible)とは、2002年のフランス映画。第55回カンヌ国際映画祭正式招待作品であり、東京国際ファンタスティック映画祭2002のクロージング作品でもある。監督はギャスパー・ノエ、出演はモニカ・ベルッチ、ヴァンサン・カッセルなど。恋人が凄惨な性的暴行を受け、男は友人と2人で犯人探しを始める。原題は「ひっくり返せない、不可逆、取り返しがつかない」を意味するフランス語。シークエンスは後に起こったものが先にあり、時系列的には最初のシーンがラストに示され、エンドロールが冒頭で逆回しされている。モニカ・ベルッチが演じた約9分間の暴行シーンの描写は評価がわかれた。

樫田周一郎のレビュー・評価・感想

アレックス(映画) / Irréversible
7

後ろから語られる女性暴行事件

『アレックス』はフランスのギャスパー・ノエ監督の作品です。
凄惨な暴力や性的暴行の描写で世界に衝撃を与え、一大センセーションを巻き起こしました。暴力は本当に容赦がなく、暴行の場面についてもたっぷり10分くらいはあるので、そういった描写が苦手な方はご覧にならないことをお勧めします。
エンディングから始まって徐々に時間を遡っていき事件の全容が明らかになるという構成です。最初から緊張感マックスで始まるため、物語に引き込まれます。最初は何が起こっているか全くわかりませんが、時間を遡っていくうちに事情がわかってきます。
展開にスピード感がありテンポがいいのに加えて、暴力描写が多いため退屈することはまずありません。
ラストから始まって事件の発端や被害者と主人公たちの関係が明らかになっていく構成のため、最後の方になって彼らの穏やかな生活場面や幸せな将来への暗示が描かれます。その平穏が打ち砕かれる様子を先に見せられているため、彼らの幸福な様子やそれを当たり前と捉える姿には胸が締め付けられます。
容赦のないバイオレンス描写が特徴的ですが、勧善懲悪型の作品ではなくむしろ淡々と描いていような印象すら受けます。そしてそのあっけなさこそが、暴力や幸せの崩壊といったものの本質を表しているように思えます。
ぐるぐると回るカメラワークや繰り返される赤色の描写が印象的で美しい作品です。