ギターヒーローはコミュ障のヒーローとなり得るか!?アニメ版について紹介
『ぼっち・ざ・ろっく!』は『まんがタイムきららMAX』で連載されているはまじあきによる4コマ漫画。2022年10月〜12月にアニメ版も全12話放送されていた。
本記事ではアニメ版に基づいて書いている。
まずはあらすじを紹介。
「ぼっち」こと高校1年生の後藤ひとりは生来の内向的な性格のせいで、生まれてこの方友達が出来たことがないほどの極度の人見知りの女のコ。
ところがこのぼっちちゃん、実はギターの達人なのだ。
中学生の時にテレビの音楽番組でバンドマンがトークしていた「俺も学校では陰キャだった」に強烈な刺激をうけ、ギターでバンド(というか友達)を作ることを目標に、お父さんのギターで毎日何時間も何時間も、全ての時間をギター練習に捧げる。動画投稿サイトでそのテクニックを披露すると登録者数3万人以上になり、「ギターヒーロー」と崇められるほど上達してしまったのだ。もちろん顔出しNGであるので、誰も彼女の正体を知らない。
高校生活でこそ、このギターでバンドを組む(友達を作る)夢を抱いていたのだが、 ここでもコミュ障は改善できず撃沈。家で独りギターを弾く日々を送ることに。
鬱屈した毎日を送るぼっちにひょんなことからギタープレイヤーを必要としていた 伊地知虹夏(いちじにじか)に出会い、半ば強引にバンドに加入させられる。
みどころはなんといってもヒロインぼっち・後藤ひとりちゃんの強烈ネガティブな個性!
余りにも面白く描かれてるもんだから特別な個性にも思えてしまうんだけど、実は内向的な面を少しでもお持ちの方ならものすごく共感できるつぶやきを連発するのだ。
「スマホに届くのは、親からのメッセージか、クーポンのお知らせだけ」 「(好きな歌は)青春コンプレックスを刺激する歌以外なら、なんでも」 「いや違う!真のコミュ症は逃げることも出来ない!」 「絶対嫌だ。働きたくない、怖い」 「社会が怖い!」 などなど、内向的なら声に出さなくても思ってることをぼっちちゃんは代弁してくれるのだ。
さらに 「私がアカウントなんて持ったら…」 「生まれてしまう!承認欲求モンスター!」 と、実はコミュ障でも承認欲求は高いことを知らせてくれたり、 「体育祭…このイベントの真に怖いところは!」 「結局陰キャが何をしても邪魔な存在であり」 「隅の方でじっとしていても非協力的と罵られるところである!」 と、イベント時のコミュ障のリアルな立ち位置を教えてくれたり、 「人生とはどこまでも地獄なのか」 「高校在学中にデビュー出来なかったら、私も一旦は就職しなきゃいけないんだよね」 というように、社会人になるのが怖いからミュージシャン(芸術家)にできればなりたい、とコミュ障なら1度は考える胸の内を教えてくれるのだ。
ぼっち(ひとり)は1つ年上の虹夏のバンドに入り、同じく1つ年上の山田りょう、同級生喜多郁代と個性あふれる面々で「結束バンド」と名付けたバンドの練習やライブに励んでいく。
バンド活動を通して段々とコミュ障を克服してリア充ミュージシャンになって行くようなセラピー漫画ではないので、共感で支えてる読者を置いてけぼりにはしない。
「ぼっち」はあくまで「ぼっち」。でもきっと少しずつは大人になっていくコかもしれない。
コミカルなストーリーということもあるかもしれないが、出てくる登場人物は大体人が良い性格をしている。
ぼっちの家族は皆ぼっちの特性には理解があり、何かを無理強いするような描写もない。5歳の妹は逆にコミュ強であり、時々姉にマウント取ってくるのだが。
バンドのみんなも、ぼっちが特に症状を告白した場面は無いものの、ぼっちの特性に時に笑い、時にドン引き、時に庇い、時に頼り、友達として付き合っていく。
ぼっち自身が気付いてるのか分からないが、既に彼女の理想の生活は叶っているのだ。
だからといって生来の引っ込み思案が劇的に解消することなどそう無いので、これからもぼっちは心臓バクバクさせ、みんなに励まされ、ギターヒーローとしてみんなを助けていくのだと思う。