メンヘラ音楽なんかじゃない
よく「クリープハイプを好きな人はメンヘラ」なんて言われます。歌詞のひねくれ具合とか、フロントマンである尾崎世界観のかなり癖のあるキャラとか、特徴のあるハイトーンボイスを「受け入れにくい」と思う人も多いみたいです。「そんな癖のあるバンドにハマって救われるなんて、ちょっと情緒が弱いんじゃないの」「ちょっと変わっていて世の中生きにくいと思っている若い子が好きなバンドでしょ」って思われることもしばしば。
でも歌詞をよく聞いてみて欲しいです。ハイトーンで絞り出されたような声で歌われる言葉は、世の中のいろんな理不尽や不条理にやっつけられないように強くなろうとすることを応援してくれて、でも弱音を吐くことも肯定してくれる。バカヤローって思いながら泣く、あの名前を付けられない感情を持つことを許してくれる。世の中全体に向けてじゃなくて、たった1人、ここにいる自分に向かって頷いてくれるような歌詞は、普段メンタル強いふりをして、「世の中こんなもんでしょ」って平気なふりして、でも本当は歯を食いしばって日常を戦っている人みんなに届くんじゃないかと思います。上手に生きるために自分の心の中で檻にしまっていた、寂しい、つらい、馬鹿にしないで、でも大好き、という複雑な感情で暴れる猛獣を放ってしまうような、檻の鍵みたいな、劇薬みたいな音楽です。
解き放つのは危険だけど、安全なままで生きるよりはいいと私は思います。