BEASTARS / ビースターズ

BEASTARS / ビースターズ

『BEASTARS』とは2016年より板垣巴留が『週刊少年チャンピオン』で連載している漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。肉食獣と草食獣、爬虫類や鳥類などの様々な動物が共存する世界を舞台に、全寮制の学校チェリートン学園に通う悩めるハイイロオオカミの高校生・レゴシが、恋愛や部活、家族との関係や社会での関わりを通し、種間の違いに葛藤しながら成長していく青春を描く。擬人化された肉食獣と草食獣の対立や異なる種間の相互理解を巡るすれ違いが生み出すドラマは国内のみならず海外にも厚い支持を受ける。

NORIのレビュー・評価・感想

BEASTARS / ビースターズ
8

狼とウサギの交錯する運命!複雑な種族社会を描く傑作アニメ

『ビースターズ』は、中高一貫のエリート学校・チェリートン学園を舞台に、肉食獣と草食獣が共存する複雑な社会の中で繰り広げられるドラマチックな物語です。物語の冒頭、草食獣であるアルパカのテムが肉食獣に殺される「食殺事件」が発生し、学園内の緊張が一気に高まります。この事件をきっかけに、肉食獣と草食獣の間に潜在する不信感が表面化し、登場人物たちの関係性や心の葛藤が深く描かれることとなります。

物語の中心にいるのは、ハイイロオオカミのレゴシ。彼は巨大な肉食獣であるがゆえに、無口で控えめな性格ながらも、周囲からは危険視されてしまいます。そんな中、演劇部の役者長でカリスマ的存在のアカシカ、ルイとの複雑な関係性や、小さなウサギの少女ハルとの出会いが、レゴシの心に大きな変化をもたらします。ハルとの交流を通じて、レゴシは自分の中に眠る肉食獣としての本能と向き合い、彼女への純粋な恋愛感情に揺れ動くようになります。

『ビースターズ』は、単なる学園ドラマにとどまらず、種族間の対立や偏見、社会的な階層問題といった深いテーマを扱っています。肉食獣が持つ本能と社会のルールとの間で葛藤するレゴシの姿は、視聴者にとっても共感しやすく、物語に引き込まれる要因となっています。また、レゴシの成長を通して描かれる、自己受容と他者への理解の重要性は、普遍的なメッセージとして響きます。

一方で、物語の進行と共に描かれるアクションシーンやサスペンス要素も見どころのひとつです。特に隕石祭篇では、ハルを救うためにシシ組に乗り込むレゴシの勇姿が印象的であり、彼の決意と成長が如実に表れています。また、学園内の食殺事件の真犯人を探し出すためのミステリー要素も、物語を一層緊張感のあるものにしています。

『ビースターズ』は、エンターテイメントとしての楽しさと同時に、現代社会の複雑な問題を映し出す鏡のような作品です。肉食獣と草食獣という種族の違いを超えた絆や愛、そして自己の本質と向き合う姿勢が、読者の心に深く刻まれることでしょう。この作品は、単なる動物たちの物語ではなく、人間社会にも通じる普遍的なテーマを描いた、見逃せない作品です。