これが本当のリアルな等身大軽音部
『ふつうの軽音部』は、とある高校の軽音楽部の日常を主人公・鳩野ちひろを中心として描かれている作品です。
音楽を題材にした作品は多いですが、基本的には世界が舞台などスケールが大きいものや、登場人物がぶっ飛んでいてキャッチーなものが大半です。
しかし本作は、とにかくリアルな部活動と高校生活を描いており、ドロドロした生々しい人間関係もあれば、本気で部内のバンド活動にのめり込んでいく青春成長要素もあり、第三者として物語を追うよりも誰かに感情移入して追っていくのが楽しい作品です。
軽音楽部ならではあるあるネタも軽音楽部では無かった人にもありそうと思える範囲であり、そこに誰もが経験したような高校時代あるあるも合わさり、更に登場人物がは絶妙に「こんな奴いたなぁ」となれる人物がほとんどで、物語への入り込みやすさが徹底されています。
もうひとつ良い点を挙げるなら、本作は軽音楽部ならではということで沢山の邦楽ロックバンドの名前や曲名が実名で登場します。年代も色々な年代に刺さるラインナップなので自分の青春時代を思い出しながらそうしたバンドや曲名を楽しむこともできます。
総じて本作は、センセーショナルな設定や展開は無く派手さはないですが、その分読み手がこの世界に没入しやすく、またテンポも良いのでどんどん読み進めてしまう中毒性があります。学生時代に音楽にのめり込んでいた人や、劇的なドラマよりもリアルな青春を読みたいと思った人にはとてもオススメな作品です。