ミッドナイトスワン

tomato1994のレビュー・評価・感想

ミッドナイトスワン
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心揺さぶる人間ドラマ!差別と偏見に立ち向かう少女の感動の物語

「ミッドナイトスワン」は、一見LGBTQをテーマにした映画ですが、実はそれ以上に深い人間ドラマが描かれた作品です。

物語の中心は、トランスジェンダーの女性・凪沙と、バレリーナを目指す少女・いちかの2人です。草彅剛演じる凪沙の演技が驚くほど自然で説得力があります。凪沙の悩みや喜び、強さが画面から伝わってきて、思わず引き込まれてしまいます。

出会いから始まり、徐々に絆を深めていく2人の様子を丁寧に描いています。しかし、この関係は決して平坦ではありません。最も心を揺さぶられるのは、やっと家族らしい関係を築き始めた矢先、いちかが実の母親に連れ戻されてしまうシーンです。突然の別れに思わず涙してしまいました。ここが最初の泣きポイントです。

さらに、凪沙が性別適合手術を受けた後の展開も非常に切ないものがあります。いちかを取り戻そうと奮闘する凪沙ですが、社会の偏見や閉鎖的な環境に阻まれてしまいます。凪沙の努力が報われず、術後のケアを怠ったことで寝たきりになってしまう様子は、現実の厳しさを突きつけられる場面です。

しかし、この映画は決して暗い話で終わりません。困難を乗り越えようとする人々の強さや、血のつながりだけではない家族の形を美しく描き出しています。特にバレエのシーンは見どころのひとつで、優雅な踊りと音楽が登場人物の感情と重なり、胸が締め付けられるような感動を呼びます。

「ミッドナイトスワン」は、社会の偏見や困難に立ち向かう人々の姿を描きつつ、「家族とは何か」「愛とは何か」といった普遍的なテーマを問いかけてきます。後半のストーリー展開が少し急ぎ足に感じる部分もありますが、それを差し引いても十分に見る価値のある作品です。

この映画を見終わった後、きっと何か温かいものが心に残るはずです。人間の優しさや強さ、そして愛の力を、静かに、でもしっかりと感じられる作品です。映画館でも配信でも、ぜひ1度ご覧になってみてください。そして、この映画について誰かと語り合ってみてください。きっと新しい発見があるはずです。