当たり前を見つめ直したくなる人情ミステリを描いた漫画
大学生の「久能整(くのうととのう)」が様々な事件に巻き込まれ、独自の着眼点と発想によって事件を解決へと導くミステリ漫画です。しかし単純な事件の解決だけがこの漫画の本質ではありません。犯人も巻き込まれた人々も、整くんとの対話によって新たに気づきを得たり己を省みたりします。そんな人と人との交わりと、お互いに影響を与え合う人間模様が、この作品の大きな魅力だと思います。
作者の方は「ミステリではない」と仰っているようで、それが「ミステリと言う勿れ」というタイトルにも反映されているのですが、その真意は謎や事件ではなくて、それが起きる過程や、それを起こす人間こそが描きたいものだからではないでしょうか。ですので、ミステリ好きにはもちろんですが、普段ミステリにはあまり興味がないという方にもおすすめの作品です。キャラクターだけでなく、読んでいる私たちもまた、自分が持っていた思い込みに気づかされ、肩の力が抜けるように感じます。
ストーリーは、整くんやその周りの人が事件に巻き込まれ、それを解決するという流れで進んでいきます。一つひとつ別の事件が積み重なっていくうちに、その裏で大きな流れが動いていて繋がっていることに気づき始めます。全貌が見えるまでのドキドキ感もまた、読み進める中での楽しみのひとつです。