ジャンプ史上稀に見る多彩な魅力のおっさん達
『少年ジャンプ』は過去にアメフトやバスケ、サッカー、囲碁といった、当時の少年少女にとってはマイナーだったジャンルの作品を連載して大ヒットさせました。『あかね噺』もそれに続く作品といえます。
本作のテーマは落語。主人公の少女、桜咲朱音(おうさき あかね)が、落語家の中でも最高の実力者の証「真打」を目指して奮闘する物語です。
落語は観客にウケなくてはなりません。そういう意味では落語家と観客の真剣勝負です。あかねが聴衆にどんな噺をするか、ライバルはどんな話芸を持っているのか。キャラクター達が持つ思いや背景と、演目のストーリーが重なる物語構造にもなっていて、読者の興味をかき立てます。
落語という伝統芸能に、ジャンプお家芸のバトル要素と人間関係が絡んで読み応え抜群です。
落語業界が舞台のため、少年漫画では稀に見るおっさん・ジジイキャラの多さも特徴。個性豊かで味のあるおっさん達は時にユーモラスに、時に主人公たち若手の乗り越えるべき高い壁として圧倒的な存在感を放っています。
大胆で勢いよく、繊細な作画も魅力です。江戸時代風の装飾をつけた枠線や、落語のシーンでは登場人物が筆のタッチで描かれるなど、読者を噺の世界に引き込む工夫が随所に施されています。
何度読んでも新しい発見があり面白く読める作品です。