HUNTER×HUNTER / ハンター×ハンター / H×H

『HUNTER×HUNTER』(ハンターハンター)とは、冨樫義博による日本の少年漫画作品。
『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて1998年14号より連載されている。
主人公のゴン・フリークスが父親を捜すためにハンターになり、仲間とともに様々な冒険をする物語。主人公の成長、仲間との友情といったテーマがある反面、少年漫画らしからぬ残虐な描写も多く、ダークな世界観が特徴。綿密に練られた設定や伏線が人気を博している。
また休載が非常に多く、連載が再開されるたびにニュースになることがある。
テレビアニメ第1作が1999年10月16日から2001年3月31日まで日本アニメーションの制作によってフジテレビ系で放送された。第2作が2011年10月2日から2014年9月23日までマッドハウスの制作によって日本テレビ系で放送されたがこれは第1作の続編ではなく、スタッフとキャストを一新し、話は最初からリメイクされたものである。

naotabibit_056のレビュー・評価・感想

HUNTER×HUNTER / ハンター×ハンター / H×H
10

キメラアント編は切ないけど、優しい気持ちになれる

『HUNTER×HUNTER』は偉大なるハンターを父親にもつゴンが、仲間たちとともに様々な冒険を繰り広げる冒険活劇です。物語の主要な登場人物はゴン・キルア・クラピカ・レオリオで、ゴンとキルアの2人が冒険の中心になる章が多いです。
ただ最終章は変則的で、クラピカとゴンのお父さんのジンがメインになっています。
ここでは、ぼくが特に心に残った章であるキメラアント編について、お話ししていきたいと思います。

キメラアント編は、グリードアイランド編でゴンのお父さんに出会えるアイテムを使ってやっとゴンのお父さんに会えると思ったのですが、その期待がはずれて「カイト」とというかつてゴンのお父さんに救われたハンターと出会うところから物語が始まります。
実はこのカイトという人物とゴンは昔出会っていて、その時に命を救われた恩義を感じています。

はじめはゴンとカイトはそういう関係ではあったものの、そこまで仲が良いわけではありませんでした。ですがゴンのお父さんのお話をきっかけにだんだんと仲良くなり、ゴンとカイトは固い絆で結ばれました。
そんな矢先に暗黒大陸から来た生物の1つであるキメラアントが発見されたという知らせが入り、ゴンはカイトとともに調査に向かいます。しかし時は既に遅く、人間の味を覚えたキメラアントの女王は、次の王を生むために人間を襲い始めます。

その過程で、念能力を習得した個体も現れます。その3人は親衛隊と呼ばれ、その1人であるピトーが念能力を習得したハンターをとらえて、キメラアントのすべてが念能力を使えるようにしてしまいます。
それだけにとどまらず、ピトーはカイトを倒して、ゴンに深い憎しみを刻みます。これが、後のキルアとゴンとの間での掛け違いを生んでしまうことになります。
そしてそうこうするうちに王が生まれ、状況は変わっていきます。ここからが面白いところで、王は自分を楽しませてくれるものを求めて活動。その中で、出会ったコムギという少女が物語の歯車を狂わせていきます。

ここまでのお話しだとキメラアントが悪いように見えますが、このお話はそんな単純なものではなくて、キメラアント自身も元々は人間であることから人間の悪意や善意をもろに受けます。そのことからいいキメラアントも生まれ、それは王であっても例外ではないのです。

物語は王がコムギと出会ったことから急展開を迎え、王はだんだんと人間に近づいていきます。いや、人間よりももっと人間らしく。
ただ、キメラアントであることには変わりなく、運命は残酷で、駆除の命令が会長にくだされます。しかしここもみそで、最終的に王の命を奪ったのは、人間の悪意の塊である兵器。それは強い毒性のあるもので、自身だけでなく周囲も感染させて、死に至らしめます。またその戦いの最中に、ゴンも憎しみにとらわれた状態で、ピトーを倒すことに成功します。

結局のところこの戦いを制したのは人間の正しさではなくて、善悪どちらにも傾く強い意志の力と悪意でした。最終的には、何も残らなかったといっても過言ではないのかもしれません。
いや残ったものはありました。それは、母性愛に近い愛情です。王は死期が近いことを悟ると、コムギと最後に軍儀を打ちたいと願いました。王とコムギは最後の打ち合いをしていくなかで満足して、母親に対する愛情をコムギに感じ、コムギもまた王に愛情を感じて王もコムギも最後は穏やかに亡くなりました。

キメラアント編はどこにも正しさはなく、どちらかというと人間の悪意が一番怖いという形で終わりを迎えましたが、最後に王とコムギのやり取りの中に「それだけではない」という希望を残す形にはなりました。
たぶんこのテーマもまた普遍的なテーマではあるのでしょうね。ただその中で、作者は不器用なりにもどこかしら人を信じているということをこのキメラアント編を通して、強く感じました。
ぼくもまた、このレビューを書いていく中で今一度人を信じてみようと思いを抱くようになったというところで、文章を締めくくりたいと思います。