中学受験がテーマの傑作マンガ。これを読んだら中学受験したくなるかも!
塾講師として受験業界に飛び込むことになった佐倉麻衣。
彼女の勤め先である桜花ゼミナール吉祥寺校の塾長・黒木蔵人は、儲け至上主義の冷血漢で、彼にとっては塾生も保護者も“お客様”であり“金脈”だ。そんな黒木に佐倉は激しく反発するが、実は黒木には秘めた思いがあった…。
作者は高瀬志帆。2021年には柳楽優弥主演でドラマ化もされている。
少子化にもかかわらず加熱の一途をたどる中学受験のリアルが赤裸々に語られており、「業界からクレームが入るのでは?」と心配になるほど。なにせ冒頭から「君達が合格できたのは、父親の経済力、そして母親の狂気」というパワーワードが出てくるのだから。
そのぶん、読みごたえは抜群。そして受験業界の商業的な側面だけでなく、厳しい現実に立ち向かう子どもたちの成長や彼らを見守る保護者たちの思いも丁寧に描かれている。入試本番から合否発表のくだりでは1人1人の生徒にドラマがあり、涙なしには読めない。
黒木の「凡人こそ中学受験」という言葉は、『ドラゴン桜』の「バカとブスこそ東大に行け」と通じるものがあり、この作品を読む前と後では中学受験に対するイメージはかなり変わるはずだ。
教育虐待、教育格差、子どもの貧困といった社会問題も盛り込まれている。大人も子どもも、中学受験をした人もしなかった人も、誰が読んでも学びと感動を得ることのできる傑作である。