ファイト・クラブ / Fight Club

ファイト・クラブ / Fight Club

『ファイト・クラブ』とは、1996年に発表されたアメリカの小説家チャック・パラニュークによる同名小説が原作となっている、1999年制作のアメリカ映画である。不眠症で悩む会社員「僕(エドワード・ノートン)」はある日火事が原因で住む家を失くし、謎の男タイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)の家に居候することになった。「泊めてもいいが条件がある。俺を殴れ」という突拍子ないタイラーの言葉をきっかけに、二人はお互いを殴り合う行為にハマっていく。

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ファイト・クラブ / Fight Club
10

膨張する資本主義を鋭く撃ち抜く危険な映画

冴えない生活を送る不眠症の主人公が出会った風変わりな男と始めた共同生活。
一緒に組織したアンダーグラウンドのファイト・クラブ。

そこには夜な夜な男たちが集まり、お互い、殴り殴られる真剣勝負の刹那。
組織は主人公の知らぬところで日に日に拡大し、当初の目的を逸脱していくのだった--------。

チャック・パラーニックの原作を新人脚本家ジム・ウルスが脚色し、「セブン」、「ゲーム」のデヴィッド・フィンチャー監督の問題作だ。
出演はエドワード・ノートン、ブラッド・ピット、ヘレナ・ボナム・カーター。

病んだ作品世界に病んだキャラクターと濃い役者。
過剰に攻撃的なダストブラザーズによるスコア。
後半のとんでもない展開の伏線が、なんとサブリミナル映像というルール違反。
破綻寸前でまとまった危うさ。いびつだが、魅力的な傑作、というか、他ではまず見られない大怪作だと思う。

CGの助けを借りて、自在に動きまわるカメラに象徴されるように、スタイルと物語が拮抗し、ときにスタイルそれ自体が強烈に自己主張を始める。
セックス・シーンですらCG処理してみせる、そのあまりに人為的な映像。
その居心地の悪さ、そして面白さ。そして、その必然性。

どんな作品にでも自分の刻印を明確に刻み、しかし、あくまで商業映画の枠の中で消化してきたフィンチャーだが、ここにいたっては、もはや「ベストセラー原作の映画化」をダシにして、世界を挑発しているとしか思えない。

曲者俳優エドワード・ノートンとスター俳優ブラッド・ピットが肉体改造をして熱演しているが、画面に映らない映画監督が、その両方を食ってしまっているといってもいいほどの存在感はなんなのだろう。

見た目のスタイルや刺激に惑わされそうだが、この作品は、その裏に隠されたテーマ性ゆえに、必ず、映画史に後々まで残る作品になるだろう。

日に日に肉体的なリアリティを失うサイバーな世紀末に、原初的な衝動をあらわにして殴り合う男たちを置き、1980年代から引きずり続けてきたヤッピー文化の尻尾と、膨張する資本主義を鋭く撃ち抜く危険な映画であると思う。

それを象徴するのが、この作品のラストシーン。このヴィジュアルイメージに、背筋が震えた。
初めて観た時に感じた衝撃をどう表現すればいいのだろう。
何度、観返しても惚れ惚れとする作品だ。