アメリカ映画史に残るミュージカル映画の傑作
1930年代後半から1950年代にかけて、MGMが製作した数あるミュージカル映画の最高峰、と言うより、アメリカ映画史に残る傑作が「雨に唄えば」だと思います。
この映画は、もう何度も数えきれないくらい観ていますが、観るたびに、これほど胸踊らされるミュージカル映画は他にはないと思うくらいです。
この作品は、何と言っても、監督・振付・主演を務めたジーン・ケリーの魅力に尽きると言ってもいい映画で、とにかく彼が大活躍するんですね。
元来、ジーン・ケリーという俳優は、"俺が俺が"の出たがりタイプなのですが、この作品では、それがプラスに作用したと思うんですね。
ダンサーとしては派手な見せ場を好み、彼のライバル、フレッド・アステアの優雅でエレガントで粋なダンスとは対照的に、ダイナミックな踊りっぷりで鳴らした彼の、ベスト・パフォーマンスを心ゆくまで堪能できる映画だと思います。
そして、共演に、ドナルド・オコナーとデビー・レイノルズを抜擢したことも大正解だったと思います。
当時、若手の二人が加わることで、さらに活気溢れるミュージカル・ナンバーが仕上がったのだと思います。
やはり、この作品の白眉は、なんと言っても、主題歌「雨に唄えば」ですよね。
どしゃ降りの雨の中で、恋の喜びを歌い、そして踊るジーン・ケリーの素晴らしさは、もはや説明不要だと思います。
それくらい、例えようもなく素晴らしく、このシーンは何度観ても、胸躍らされるものがありますね。
満面の笑みをたたえて踊る彼を観ると、この世の憂さも吹き飛んでしまいます。
まるで、ワンカットで撮影したような流麗なカメラワークも、実に見事で、彼の歌とダンスを大いに盛り上げていると思います。
他にも、ドナルド・オコナーが、体を張って多芸ぶりを披露する「笑わせろ」。
フィルムに記録された最高のタップ・ナンバーと謳われた、ジーン・ケリーとドナルド・オコナーの丁々発止のタップ合戦「モーゼズ」。
デビー・レイノルズを加えたトリオが賑やかに歌い踊る「グッド・モーニング」など、呆れるほど楽しいナンバーが続出して、楽しませてくれるんですね。
そして、映画の後半のハイライトが、13分の長尺ナンバー「ブロードウェイ・メロディ・バレエ」ですね。
共同監督のスタンリー・ドーネンは、後に彼の自伝で「長過ぎた」と反省しているらしいのですが、無数の群舞を率いたジーン・ケリーのエネルギッシュな踊りは、まさに圧巻です。
そして、極彩色のセットも実に美しかったですね。