宝物
少し前の作品になるが、『フルーツバスケット』は忘れられない漫画だ。
これは、異性に触れると干支の動物になってしまうという呪いをかけられた一族と、ある少女との物語である。
一見するとファンタジー要素盛りだくさんのなのかと思うかもしれない。しかし、登場人物達の絶望や心の闇の描き方がリアルで、読んでいるこちらがまで心が痛くなってしまう。主人公の少女ですら例外ではない。
その逆に暗い闇から前へ進もうともがく姿はとても眩しい。
物語終盤に登場人物達が呪いや心の闇から解き放たれてそれぞれの人生を歩みだす瞬間は爽快であるが、同時にいってらっしゃいと送り出す側の気持ちになりとても寂しくなってしまう。
また、この作品のすごいところは、読み終わった後でも彼らはどうしているかなと考えさせられるところだ。
それは、登場人物達の一人ひとりに物語があり、『フルーツバスケット』の世界の中で一生懸命生きている証拠でもある。最終話の先にもきっと幸せな人生が続いているのだろうと思わせてくれるのだ。
続編も出版されており、彼らのその後を垣間見ることができる。
完結して久しい作品だが、初めて読んだ時に憶えた感動は色褪せない。何度も読み返したくなる素晴らしい作品である。