センチメンタルが爆発する
「家に帰るまでが遠足です」ではないけれど、映画館を出てタクシーが流れる車道を横目に見ながら、夜の街を歩いて帰るまでが本作です。是非レイトショーで見てほしい一作。
あるカップルの特定の1日を切り取って1年ずつ遡って見せていくもの。別れてお互い別々の道を歩き始めているところから、出会ったころまでの数年を描いている。
池松壮亮の甘ったるいしゃべり方と、伊藤沙莉のしゃがれた笑い声がとにかくピタリとはまっていて、センチメンタルを倍増させる。
年を遡るごとに変化していく距離感と、お互いを見るまなざしの温度。
1年ごとに見たら微妙な変化かもしれないが、それを本当に上手に2人が演じてくれているので、感情移入せずにはいられない。別れるにしても、付き合い続けるにしても、恋が始まったころの熱量はどうしても薄れていってしまうから。
その思いを知っている人であれば、ジワジワとせつなさが溢れて泣いてしまうと思う。
本作は、尾崎世界観がジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て書き上げた『ナイトオンザプラネット』という曲に触発されて作られたとのことなので、予習がてら『ナイト・オン・ザ・プラネット』も鑑賞する。
数年ぶりに見返したそれは、思っていた感じとちょっと違って、エンディングで流れた歌詞にまたジワッときてしまう。
「久しぶりに観てみたけどなんか違って それでちょっと思い出しただけ」。