スポーツ漫画の金字塔
普段あまり漫画を読まないという人でも、1度は目を通したことがあるのではないだろうか。そう思わせられるほどに、あらゆる世代に知れ渡るスポーツ漫画の傑作がこの『スラムダンク』だ。
主人公、桜木花道は自らを「天才」と称するが、彼は根っからの「努力家」である。いや、正確にはこうと決めたらなりふり構わず突き進む「バカ」というべきか。もちろん、これは最上級の誉め言葉である。
そして桜木以外にも言えることだが、この漫画には「生まれながらの天才」はいない。持って生まれた素質に差はあるものの、皆涙と汗に塗れながら苦しい練習を乗り越えてきた者たちなのだ。
高校生活はたったの3年、さらにバスケットをプレイできる時間はそれよりもっと短い。この漫画が名作たる所以は、その潔くも寂しい、しかしこの上なく爽やかなエンディングに集約されていると思うのだ。
激戦を制し続け、赤木を始め部員の悲願である全国制覇を見事に成し遂げる、そんな結末を皆は待っていただろう。しかし実際は、桜木の言い放った「今」に持てる力の全てを賭け、湘北は散っていった。
彼らはその後大学に進学し、あるいは日本代表に選出され、またあるいはバスケから離れる者もいるかもしれない。そして恐らく、あの「今」に勝る瞬間に再び出会うことは難しいだろう。
その一瞬の輝きが、長きにわたり私たちを掴んで離さないのである。