歌のパワーに触れてほしい作品
『マクロス7』は「心が熱くなる」「感動し涙する」アニメである。なぜなら、主人公の熱気バサラとヒロインのミレーヌが歌う曲は「歌詞」「歌声」「音楽」ともに「心が揺さぶられる」からだ。実際に日本で発売された、バサラとミレーヌが務めるバンド「Fire Bomber」のCDアルバムはオリコン初登場4位を獲得している。
マクロスのテーマである「歌」「三角関係」「戦闘」は、マクロスシリーズの中で、この作品がダントツに面白いのだ。
「歌」は、声優担当と歌声担当が別々におり、とてもこだわった構成をしている。歌声担当は本物のミュージシャンを採用しており、度肝を抜く声量とシャウトで視聴者を魅了するのだ。普段の声と歌唱シーンの声が別人ということに、何も違和感なく見ることができるのが驚きだ。
「三角関係」は、とても複雑な構成になっている。未知の生命体である「敵」が三角関係の中に加わってくるのである。もはや三角関係ではなく、四角関係なところが、他のアニメにはない面白さである。 「戦闘」は、迫力ある作画であり、戦闘機はデザインもかっこいい。三段階に変形できるところがマクロスの素晴らしいところである。
宇宙を旅する巨大移民戦艦には、「街」「海」「空」「森」を人工的に造り出し、ほぼ地球と同じように人々が生活しており、宇宙の敵に備えて「戦闘機」や「軍人」も配備されている。
主人公の熱気バサラは、ロックボーカリストでありながら、自身専用の戦闘機を持っている謎の人物なのだ。未知の生命体「プロトデビルン」の襲撃に対して、戦場で戦うことはせず、「歌う」ことしかしない、前代未聞の戦わない主人公として視聴者の注目を浴びたのである。戦わない主人公に対して番組に抗議の電話があったというのだから驚きだ。
最初は、「敵」「味方」「視聴者」ともに熱気バサラの歌をバカにして相手にしなかったが、次第に「歌のエネルギー」に魅了されていくのである。
「歌の文化」がない敵の「プロトデビルン」は、歌を聞くと苦しみ始め逃げるようになり、主人公の熱気バサラは、逃げる敵に対して「自分の歌はなんなのか?」わからなくなり、次第に歌えなくなっていくのである。
歌えなくなったバサラを救ったのは、敵であるプロトデビルンだった。敵と歌で分かり合えたバサラだったが、船団の判断は、無情にも「全面戦争」の命令だったのである。ここから「涙なし」には見られない展開になっていく。
『マクロス7』は中盤からクライマックスまでが息を飲むほど切なく面白くなっていくので、ぜひ最後まで見続けてほしい作品のひとつである。