タイトルからくる強烈なメッセージ
主人公、久能整(くのう ととのう)は個性的な髪とキャラの持ち主。
一人暮らしだが両親の姿も友人の姿も見られず常に1人。かといって人嫌いなのかといえばそういう訳でもなく、驚くくらい人の懐に入り込んでしまう。
断片的に差し挟まれる幼少期のエピソードからは、生育環境が良いようには見えない。独りが好きなのかと思えば将来の希望は反対の職業。穏やかで、でもピュアというわけでもない。各話で淡々と犯人を論破していく様は、少々の不気味ささえ覚える。整の存在自体が作品の大きなミステリの1つといえる。
構成としては、小さな事件とより大きな事件を組み合わせた入れ子構造になっており、ミステリの基本の型の1つ。事件も陰惨なものが多めだが、他ミステリと大きく変わることはない。
ただ整が犯人を論破する際に紡がれる言葉たちが、この作品を独特なものにさせている。事件が起きたきっかけというのは謎でもなんでもない。ほんの少し誰かを思いやったり気遣ったり、自分の心のありようを変えていれば防げたのではないか。
ミステリのようで完全なるミステリとはいえない。
最終的にタイトルに収束してしまう感じがする。誰の立場に立つかで整の言葉を受け入れられるかどうかが決まる作品でもある。