主人公の人としての成長を一緒に見守る。
家族を失ったその日、彼は将棋の神様と契約をした。将棋の家の子として引き取られる事になるが、そこで上手く馴染むことが出来ず、ただただ将棋に没頭する日々。「自分にはこれしかない」とさらに将棋の勉強を邁進する事で成績は良くなる一方、それに比例して家の中では孤立していき、どんどん居づらくなる。そして、わずか15歳で家を出て一人暮らしを始めてしまうのだ。
家族を失い友達もいない、孤独なプロ棋士高校生。しかし、本当は心のどこかで人との繋がりを求めているのだろう。彼は中学を卒業してそのままプロ棋士としてやっていく道もあったはずだが、1年遅れて高校へ編入し学生生活をやり直す。そして優しく接してくれる三姉妹達との日々を大切に過ごしていくのだ。
彼をさらに孤独にしたのは将棋だが、人との繋がりを紡いでくれたのもまた将棋であった。家を出て、三姉妹達と出会い、ひたむきに将棋に向き合う姿に同じプロ棋士達との縁が結ばれていく。そして初めの頃には想像していなかったであろう、主人公の表情や考え方が物語が進むにつれ豊かになっていくのだ。
なんと、ちゃんと恋までしちゃっている。幸せになると今度は不安になる。そんなちょっぴり大人になっていく姿が描かれており、彼の人としての成長を読者も一緒に見守っている気にさせてくれる。