これは男の世界を描くガンダムだ。
『機動戦士ガンダム』における一年戦争を舞台にした作品の中で、とりわけ硬派且つ異彩を放つ『ガンダム』の漫画作品。
『サンダーボルト』は2人の男から始まる狂気と愛の二重奏が濃く、それでいて他の『ガンダム』シリーズとは一線を画す、バックナンバーミュージックの数々が特徴だ。
漫画であるはずのこの作品には、音楽の印象を鮮烈に残していく点でとても上手く、描き方や表現にリアリティーが存在する。だがその一方で作中には第3勢力、戦争の狂気が生んだ発明品、理不尽な人の死や人体実験の闇など、挙げていけばキリがないぐらいのR指定設定が存在している。
狂気の発明に至ってはもはや度を越している。だが戦い続ける男たちの悲哀と殺し合う宿命に葛藤し、繋がりを決して安っぽくしない戦う男の世界がこの作品には存在しており、特に後半の失うことの辛さを糧に立ち上がるそのカッコよさはまさに男の美学である。惹かれないはずがない名シーンだ。
また作中には『ファーストガンダム』を知る人ならニヤリと出来る小ネタが仕込まれているので、探してみるといいかもしれない。
何より宇宙世紀の作品では良作であり、珠玉の宇宙世紀体験が叶うことを含めれば、『ガンダム』のヘビーユーザーもビギナーも総じてオススメ出来る漫画である。