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『バットマン ビギンズ』でノーラン監督はバットマンの正義をどう定義したか?
クリストファー・ノーラン監督が描くバットマン3部作の1作目。今作は主人公ブルース・ウェインのイメージ、そして理想のバットマン像を、ノーラン監督の美学に基づき詳細に表現された作品だ。
はじめに「なぜバットマンになったのか?」「なぜコウモリなのか?」などバットマン誕生のルーツから始める。そして、ヴィランはたまた警察との闘いや、執事アルフレッドとの会話の中から「バットマンの正義とは何か?」「仮面を外したブルース・ウェインはどう生きるべきか?」など、自身の在り方を見つめる姿が映し出されていく。ゴッサムシティという歪んだ世界の中で、続く闘いに向けて、今作のブルースはひとつの結論を出している。
結論、今作のバットマンは、紆余曲折を経ながらも最終的には自身の正義と復讐を分別して捉え、見事に後ろ暗い過去を乗り越えている。他のバットマンシリーズでは、復讐の瘴気に苛まれ、正義との分別があいまいになり、心を病む描写が描かれることもしばしばある。しかし、当作品はバットマンらしい暗躍ぶりを見せながらも、総合的には純粋なヒーローの姿を描いている。
正義と悪、その隔てが難しいバットマン作品である中、ヒーローの心の美しさのようなものをよくうかがうことができ、観た後の安心感が強い。