登場人物は妖怪だけど拍手喝采のヒューマンドラマ
妖怪を扱った作品でありながら、描いているのは人間という印象です。
人間の醜さ、惨めさ、さもしさといったものが、ありありと伝わってくるようでした。
時代背景が戦後の日本だからか、雰囲気は横溝正史の描く「金田一耕助シリーズ」に通ずるものがあります。
特に水木が龍賀家に弔問に訪れた際、弁護士によって遺言書が読み上げられるシーンなんかは「犬神家の一族」を思い起こしました。
龍賀時貞翁の遺影が存在感を示しているのも、犬神家の佐兵衛翁の遺影がちょこちょこ映り込むのとよく似ています。
閉鎖的な田舎の感じは「悪魔の手毬唄」、村ぐるみで感じる狂気は「獄門島」と言ったところでしょうか。
とにかく、金田一耕助シリーズのファンならグッとくるものが多いと思います。
そんな中、誰よりも血の通ったキャラクターとして印象的だったのが、鬼太郎の父であり、かつての目玉おやじである「ゲゲ郎」なんです。
幽霊族であるゲゲ郎が、誰よりも温かい。人間ではない彼が、誰よりも人情があるという矛盾。
そして、その狭間で揺れ動くのが今回の主人公・水木でした。
水木は戦争を通して人間のあさましさを知り絶望していましたが、ゲゲ郎との関わりの中で少しずつ変化していきます。
そして、当初は己の野心のために龍賀一族に近づいた水木が、「地位、名誉、金、いい家、いい服、女」をこの世の全てだと主張する時貞を「つまんねぇ」と一蹴!
これが最高に気持ちよく、本当に格好良かったです。
そのシーンからエンディングまで、涙が止まりませんでした。