SPY×FAMILY / スパイファミリー

SPY×FAMILYは遠藤達也による日本の少年漫画。ウェブサイトである『少年ジャンプ+』で2019年3月25日より隔週月曜更新で連載開始、2022年4月よりテレビアニメが放送開始された。
この作品の主人公は『黄昏』の二つ名を持つ敏腕スパイで、本名は明かされていないが、作中ではロイド・フォージャーと名乗っている。
架空の国、東国(オスタニア)と同じく架空の国、西国(ウェスタリス)が睨み合う世界を舞台としており、両国は休戦状態であるものの、何時、再び開戦が起きてもおかしくない危うい状態となっていた。
そんな世界で、西国のスパイである主人公のロイドは平和の維持、その先にある和平を目指し、東国へと潜入。開戦派と言われる東国の政治家ドノバン・デズモンドと接触するためにある命令を所属している組織より受ける。それは子供を作り、デズモンドの息子が通っている学校に通わせることだった。
命令に応じ、孤児院より少女、幼い少女アーニャを引き取り、母親役としてヨル・ブライアと言う女性と契約結婚、偽装家族を作り上げる。しかし何とアーニャは心を読む力を持つエスパーでヨルは殺し屋であった。妻と娘の秘密を知らないロイド、夫と娘の秘密を知らないヨル、全員の素性を知るアーニャ。秘密を抱えた3人はさまざま事件に遭遇し、次第に本当の絆を紡いでいく。ほのぼの日常×シリアスを描く物語、SPY×FAMILYはそんな話である。

Libanm3のレビュー・評価・感想

SPY×FAMILY / スパイファミリー
9

『少年ジャンプ』を読んでいた少年たちが大人になった今、見るべき作品。

『少年ジャンプ+』で連載している作品。『少年ジャンプ』のキャッチコピーである「努力・友情・勝利」という、凝り固まったテーマイメージをいい意味で破壊するような、一線を画す画期的な作品となっています。

そもそも「少年」と名を冠する雑誌に掲載される作品のメインテーマが、「殺し」「スパイ」などといった、薄暗く陰鬱な職業であると誰が思っていたでしょうか。まずこの時点でギャップにやられ「見たい!見たい!」といった前のめりな欲が湧いてきます。
もちろんイメージそのままのダークなテーマ、キャラクター、ストーリーがただ展開されるのなら少年誌には載らず、別会社の青年誌で細々と連載される作品だったかもしれません。

しかし本作品は主人公の子供アーニャを中心として、熱い正義の心を密かに持つ父親ロイド、冷酷さと天然さを併せ持った殺し屋でもあり母親となるヨルが織りなす”家族もの”としての一面を持っています。
利害関係を持ったそれぞれのキャラクターが父、母、子をロールプレイしていく中で、徐々に変わっていく心情の繊細な表現は物語の魅力の一面です。

更にこの作品が他作品と一線を画す理由としては、主人公アーニャが持つ「他人の心を読む」能力の表現です。アニメや映画の中で、様々なトラブルが生じて各キャラクターの本音がすれ違う有様というのはコントのような一面があり、またハラハラする瞬間でもあります。
ですが本作品では各キャラクターの心理表現が見えるという点で「アーニャ=視聴者」となっており、あたかも作品の中に自分が入り込んで擬似体験しているような、没入型の画期的な構成になっているのです。
他人の心を読んでしまったアーニャの焦りや感動、心を読まれてしまった周りのキャラクターの次の行動に目が離せない、魅力的な作品となっています。

更に各声優の魅力的な演技は作品を大いに彩る重要なパーツとなっており、特にアーニャ役を演じる種崎敦美さんのコミカルで可愛らしい声は、海外視聴者も夢中になってしまうようです。まるで視聴するすべての人が保護者のように温かい心を持ち、涙し、笑ってしまう。世界中で愛される傑作だと評されて過言ではないでしょう。

原作も展開に謎が多く、更に無料で読むことができるという点から、アニメから原作のファンになる方も非常に多いと思います。